皆さんは、浮世絵展へ行かれたことがありますか?高い入場料を支払っても、本当の絵の良さを半分も理解できていないと思います。その要因は、ガラス越しにか鑑賞できないことにあります。ガラスの反射で本当に色調が分かり辛い、そして反射により彫・摺の技法についても分かりにくいため解説されていないということです。
浮世絵には、筆で描かれた肉筆画と木版画で作られた浮世絵版画とあります。肉筆画は受注生産ですから一点しか有りませんし、その絵を真似て贋作を制作することも可能です。後に弟子の絵に落款を入れて本物として売られることもあり、また、無落款の絵に「広重画」とか「北斎画」と入れて、有名な美術館に収蔵されている物もあります。
一方、浮世絵版画は多数刷られ、江戸庶民に親しまれることを目的としていますから、比較することが可能です。初刷り、後刷りはありますが、元の版木は同じです。色は変わっても基本的な線は同じのはずです。浮世絵版画は、絵師が筆で描いた下絵を彫師が版木に裏返して貼って彫り、出来上がった版木数枚を使って摺師が摺り重ねて完成します。特に天保以降は、彫、摺の技術が格段に進み、1mmの中に髪の毛を5本以上摺り上げているもの、5mm角の漢字とそのルビを彫って解説してある絵など、最高峰の技術が駆使されています。これらの技法は、歌麿、写楽、清長の活躍した寛政期以前では見られません。
本講座では、浮世絵版画を直にお見せします。ガラス越しで見るのとは全く違う色彩の鮮やかさ、彫、摺の技法を解説、鑑賞します。但し、オリジナルを鑑賞する関係で、人数制限をさせていただきます。その点は、ご了承ください。江戸庶民の堪能した浮世絵版画をお楽しみください。