|
< 講座概要 >
1920年代、日本では児童文芸誌『赤い鳥』に象徴される童話・童謡・童画といった所謂童心芸術文化が花開きました。そしてその最盛期といってもよい1923年、東京は関東大震災に見舞われ時代の転換点をむかえます。
一方、朝鮮半島では、韓国児童文学の出発点とされる児童雑誌『オリニ』が同年3月に創刊され、5月には現在も国民の祝日として祝われている<オリニナル(子どもの日)>の初めての全国的な記念式典を行い、「オリニナル宣言文」が拡散されました。両者ともに方定煥(パン・ジョンファン)が行ったもので、子どもの人格を尊重し、童話や童謡などの童心芸術によって抑圧された植民地の子どもたちの精神を明るい未来に向けて解放させようとするものでした。これらは<オリニ運動>として記憶され、現在も韓国の子どものための福祉や文化の精神的支柱になっています。
それから65年が経過した1988年、韓国初の単行本創作絵本『山になった巨人―白頭山ものがたり』(日本版:福音館書店、1990)が出版され、世界に評価される韓国独自の創作絵本出版の扉が開かれました。
私は、1923年のオリニ運動に始まる韓国児童文学100年の歴史は、1988年に拓かれ1995年に本格化した韓国独自の創作絵本出版によって読者を広げ、世界に認められたと考えています。
国際アンデルセン賞やノーベル文学賞受賞につながる、韓国児童文学100年、韓国創作絵本35年の歴史に通底する<オリニ運動>の精神とは何かを探究いたします。
< 受講生へのメッセージ >
私が初めて<韓国>に出会ったのは1988年、ソウルオリンピックの年です。ハングル文字を見たのも、韓国語の響きを聞いたのもこの時が初めてでした。そしてこの年、韓国人作家による初めての現代韓国絵本が誕生しました。それから30年以上が経過し、小さなノーベル賞とよばれる国際アンデルセン賞を受賞する絵本作家(スージー・リー)が生まれ、ついにノーベル文学賞受賞作家(ハン・ガン)も生まれた韓国。歴史的にも日本と関係の深い、隣人の暮らしと文化に興味は尽きません。
|