< 講座概要 >
〈個人主義〉というものを皆さんはどのように思われますか。よいものなのでしょうか、それともよくないものでしょうか。
夏目漱石はイギリス留学後、小説家となりますが、その最初の作品である「吾輩は猫である」にはすでに〈個人〉というものの理解と、なにか漠然とした不安が描かれています。また亡くなる2年前には「私の個人主義」と題した講演があるように、彼の生涯にとっての大きな課題がここにあったことがわかります。
そして、これは単に漱石ひとりの問題というより、日本人の歴史と文化の問題であり、さらには現代の日本の課題をも先取りしたものでもあったということが知られるのです。
< 受講生へのメッセージ >
本当によい文章は、人を深く考えさせるものです。夏目漱石の文章が私たちに今もなお刺激的であるのは、思索と感性が一つになった文章だからでしょう。言葉は一つ一つ心の中で育てていくものだと思います。現代は言葉が私たちの心を離れて一人歩きをしているのかもしれません。よき作品を通して、深い感性を磨いていきたいものです。
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