< 講座概要 >
「社会あるところに紛争(もめごと)あり」と言われているように、私たちの日々の生活は大小さまざまな〈もめごと〉で満ちあふれています。私たちは、うらみ・つらみや妬みから自由になれず、直面する〈もめごと〉にどう対処したらよいか、と思い悩みます。これは人間の宿命のようなもので、どの社会の人びとも同じような悩みを抱えています。
この講座では、これまでに私が東南アジア(フィリピン、マレーシア、インドネシア)で試みた文化人類学的なフィールドワーク(現地調査)から得た生の資料をもとにして、調査地の人びとが〈もめごと〉をどのように処理しているのか、そしてそこにどのような知恵と文化的意味が見いだされるのかを探ってみます。授業は下記の順に行なう予定です。
@文化人類学の見方・考え方と東南アジアの概要の紹介。
Aフィリピンの諸民族の概要と、ミンドロ島の先住民の〈もめごと〉処理法。
Bマレーシア、サバ州(北ボルネオ)の村の慣習法と町の原住民裁判所。
Cインドネシア、ジャワ島の古都ジョグジャカルタ市の公設市場での〈もめごと〉回避とジャワ人の知恵。これまでの授業のまとめ。
事前に授業内容のレジメを配布し、必要に応じてパワーポイントによる映像資料をお見せしながら授業を進めます。受講生の皆さんの質問を大いに歓迎します。
< 受講生へのメッセージ >
この講座のねらいは、東南アジア島嶼部の地域社会の人びとの間で実際に「生きている法」とその基礎をなす価値観・世界観を文化人類学の視点から明らかにすることにあります。欧米中心主義の歴史から見落とされてきた人びとに私たちの関心を向けることによって、これまでに自分が抱いてきた通念、常識をくつがえしてしまうような知的冒険に挑んでみましょう。
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