【コーディネーター・講師】
松原 典子 上智大学外国語学部イスパニア語学科教授
専攻分野/近世スペイン美術史
著作/『もっと知りたいエル・グレコ』(共著、東京美術、2012年)
【講師】
安發 和章 美術史家
豊田 唯 日本大学講師
カトリックの国スペインには強い聖母マリアへの崇敬が根づいており、古くから数々の聖母像が生み出されてきました。それらの像の中には、礼拝の対象であると同時に、美術的にも優れた価値をもつものが少なくありません。この講座ではそうした聖母像のいくつかに焦点を当て、それらを美術的な観点からじっくりと読み解いていきます。それと同時に、それらの像が生み出される背景となったさまざまなかたちの聖母への信心、そしてその背後にあるスペインの社会やスペイン人の心性についても考えます。中世から聖地モンセラートに伝わる黒いマリア、スペインのカトリック精神と分かちがたく結びついたエル・グレコの「受胎告知」、キリストの受難を前に悲嘆に暮れる聖週間の「悲しみの聖母」、甘美な姿で見る者に癒しと希望を与えるムリーリョの「無原罪のお宿りの聖母」。これらの像を通してスペインの美術、信仰、歴史の一端を垣間見ることができればと思います。