【コーディネーター・講師】
長町 裕司 上智大学文学部哲学科教授
専攻/宗教哲学、現代ドイツ哲学、キリスト教思想史
著作/Selbstbezueglichkeit und Habitus. Die latente Idee einer Geistmetaphysik bei Thomas von Aquin
【講師】
吉永 明弘 江戸川大学社会学部現代社会学科准教授
福永 真弓 東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授
山本 剛史 慶應義塾大学他非常勤講師
石原 大史 NHK制作局 第1制作センター(文化・福祉番組)ディレクター
東日本大震災と連動して生じた福島第一原子力発電所の大事故は、日本国民、日本の国土に大きな傷を残し、いまだその傷は癒えていません。原発事故をきっかけに自らが住まう環境に対して、より強い関心を持つようになった方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、「環境」とは一筋縄ではいかぬものです。「環境」とは必ずしも私たちの周囲の自然だけを指すものではありません。私たちの身の回りには、自然物だけではなく私たち自身によってつくられた人工物も存在しますし、その意味で環境は自然物と人工物の、さながらタペストリーの様相を呈しています。また、胎児にとっては、母親の子宮こそが唯一無二の環境です。日本が経験してきた公害の問題や、古くはレイチェル・カーソンの言葉は、環境汚染と体内汚染とが不可分であることを教えてくれました。
本講座では「環境」を上記のよう幅広くとらえたうえで、私たちの暮らしに寄り添いつつ根本的に考えようと思います。そのために、自然に関する哲学的思弁から、フィールドワークまでをも視野に収める学際的な学問としての環境倫理学を学びます。また今回は、環境に関連してNHKで優れた番組を創り続けているディレクターの石原さんをもお迎えして、番組制作にまつわる貴重なお話をしていただきます。理論と実践、理念と現実との往復運動を受講生の皆さんに味わっていただき、自分自身の生活と環境を再考し、より豊かな認識が持てるような講座にしようと考えています。