【2023年度秋学期】
アメリカのIT産業では、エコシステムという用語が広く用いられています。海や空や川があって、豊かな森や土壌があり、日の光が降り注ぐ中で、環境に適した生物が生まれ、育ち、次の世代へと引き継がれていく。シリコンバレーに代表されるアメリカのIT産業はそれと同じようなシステムに支えられているというわけです。
さまざまな人間の営みを支える社会経済も同じです。質の高い市場があって、それを支える法律や制度があり、優れた判断力、洞察力、好みに導かれ、さまざまな技術が生み出され、経済活動が営まれ、次の世代に引き継がれていく。イノベーションを活性化し、明るい将来が見いだせる充実した生活を営むためには、そういうソシオ・エコシステムが不可欠です。本講義では、質の高い市場とは何か、どんな法や制度がそれを支えるのか、エコシステムを支える判断力、洞察力、好みとはどんなものか、を社会科学的視点から明らかにし、健全なソシオ・エコシステムの構築によるイノベーション推進の道を考えます。
<開講のねらい>
日本経済は、30年以上にわたる長期停滞になやんでいます。長期停滞の原因として、少子高齢化がよくやり玉にあがります。しかし、人口を増やしたところで、人々の生産性が向上しなければなりません。経済やビジネスを活性化するに本当に必要なのはイノベーションの推進です。そうはいっても、号令をかければイノベーションが実現するというわけでもありません。どのようにしたら、経済や企業にイノベーションを導入できるのか。それを受講者と一緒に考えます。
<関連キーワード>
「イノベーション」「エコシステム」「ソシオ・エコシステム」「市場の質」「経済成長」「企業活動」
<ディスカッションの頻度・割合等>
ディスカッション 頻度 :毎回
ディスカッション 割合 :半分(45分)程度(全員に意見をもとめ,それにもとづいてディスカッションを行います)
テーマに関する事前知識や部署経験の有無:なくてもよい
予定講師陣
■矢野 誠(上智大学特任教授、京都大学特任教授) 全6回担当予定
※参考文献
『なぜ科学が豊かさにつながらないのか』慶應出版会 ISBN:476642185X 価格:3520円