「雅」の極地とされる平安時代の宮廷政治の姿をたどりながら、『源氏物語』に描かれたさまざまな愛憎、哀しみ、憐れみをたどります。平安時代とは、はたして煌びやかな「雅(みやび)」の時代だったのか。紫式部が描こうとした宮廷社会の実像に迫ります。 第2回無明と無常の旅路 紫式部が光源氏に投影したものは何か。皇胤でありながら不義の子である出自の哀しみ。あるいは一族の氏長者としての旺盛な政治力。美貌の女御や闊達な公達たちが繰り広げるきらびやかな宮廷社会にあって、眼も眩むばかりの美的世界の象徴として光源氏は存在するのか。物語は終焉をむかうにしたがって、しだいに哀しみと絶望の色を濃くしていきます。紫式部の眼差しにそって、平安時代の崩壊を間近にした歴史を論考していきます。
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