< 講座概要 >
近年、武家社会の儀礼に関する研究が進み、安定の時代を迎えた江戸幕府にとって、いわゆる儀礼の制度化が、大名との関係の上で大きな意味を持つようになっていたことが指摘されています。特に大名の場合、将軍へのお目見をはじめ、家督継承にかかわる儀礼は不可欠なものとして位置づけられていました。それらは否応なく大名たちを律し、序列化に結びつくことになり、極めて政治的側面が強いものでした。
今回は、大名の主たる人生儀礼に注目し、その政治的性格について考えます。ただし儀式の具体的な作法については略述するにとどめ、むしろ儀礼を通して構築されていった将軍と大名との関係を浮き彫りにすることを試みます。4回の講座では、次のような問題を取り上げます。
第1回 人生儀礼の概要:
大名たちは、その生涯を通してどのような人生儀礼にかかわることになったのでしょうか。その状況を通観しながら、とくに将軍との関係の構築について確認します。
第2回 元服とお目見:
「一人前の大名」としてみなされるには、どのような関門が必要だったのでしょうか。どのようなことが求められていたのかを明らかにします。
第3回 家督継承と婚姻、初帰国:
家督継承は、大名家の維持・存続にかかわる重大な儀式であり手続きでした。家督相続後の初帰国は、重大な儀礼の一つであり、婚姻も、幕府の許可の下に認められた関係でした。
第4回 葬送と祭祀:
大名家における葬送と祭祀の執行は、地域支配者としての大名家の存在を再確認する場でもありました。菩提寺において繰り返される祭祀の意味を考えます。
< 受講生へのメッセージ >
冠婚葬祭は、現代でも人生の区切りを示すものとしてみなされることが多いといえますが、江戸時代の位置づけは、現代とは大きく異なるものでした。異なる価値観をかいまみることによって、現代の価値観を客観化してみませんか。
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