< 講座概要 >
■授業の目的及び到達目標
大きく2つの目的をもって進める。「日本人論」や「日本語論」というものは巷に多く存在するが、それらが成立した(あるいは必要とされた)歴史的経緯に目を向け、できるだけメタ意識を持って「日本人」や「日本語」を論じる素養を身につけることを目指す。さらに、言語と文化の関係に焦点を当て、「日本語らしさ」と指摘されるものについて、いくつかの議論の構造を理解する。「日本人」や「日本語」に対する直感的イメージを否定するわけではないが、その感覚を成立させているものについて、一歩引いた態度で考察できるようになることが目標である。
■授業計画
1 ガイダンス/「日本人」とはだれを指すのか(1)
授業のねらいについて理解を深める。/「日本人」は、いつからどのように「自分たち」を均質的な民族として描き出すようになったのか、歴史的経緯を概観すると同時に、現代の文脈も踏まえて「日本人」とは何かを考える。
2 「日本人」とはだれを指すのか(2)
引き続き、「日本人」をめぐる議論について理解を深める。
3 「日本人論」はなぜ必要とされてきたか(1)
日本では「日本人論」への関心が高いとされ、事実、「日本人論」に区分けされる書籍は膨大に上る。代表的なものを取り上げ、「日本人論」が求められてきた時代背景を考える。
4 「日本人論」はなぜ必要とされてきたか(2)
引き続き、「日本人論」をめぐる議論を概観し、現代のメディア等に現れる日本人像についても取り上げる。
5 「日本人論」はなぜ必要とされてきたか(3)
引き続き、「日本人論」をめぐる議論を概観し、これからの「日本人論」についても考える。
6 「日本語」はいつから「日本語」か(1)
現代日本人が無自覚に「日本語」と捉えているものが、どのような経緯をたどってきているのか、特に近現代の「国語・国字問題」に焦点を当てて概観する。
7 「日本語」はいつから「日本語」か(2)
引き続き、日本語観の変遷について概観する。
8 「日本語」はいつから「日本語」か(3)
引き続き、日本語観の変遷について概観する。
9 「言語は文化を反映している」のか(1)
一般に言語と文化の関係について、これまでどのような議論がなされてきたかを概観する。
10 「言語は文化を反映している」のか(2)
引き続き、言語と文化の関係をめぐる議論を概観し、具体的な事例も参照する。
11 「日本語らしさ」とは何か
「日本語らしさ」という概念をコミュニケーション方法や語彙・文法的特徴から議論する。
12 「日本語」の多様性とこれから/まとめとふりかえり
「日本語」の多様性に焦点を当て、ここまでに取り上げていない、方言、位相語などについても理解を深める。授業全体をふりかえり、議論を深め、試験に備える。
13 試験とフィードバック
試験を行い、ポイントとなる点について解説する。
■教科書・参考書
テキスト:授業中あるいは事前に資料を配布する。
参考書:小熊英二(1995)『単一民族神話の起源』、船曳建夫(2010)『「日本人論」再考』、井出祥子・平賀正子(2005)『講座社会言語科学第1巻 異文化とコミュニケーション』など。
< 受講生へのメッセージ >
大学卒業後、さまざまな仕事を経験したのち、日本語教師に。昔の自分にとっては思いがけないことに、「ことば」を研究対象とする道に進むことになりました。
「ことば」は人間活動のあらゆる事象とかかわりがあるので、その研究のアプローチのしかたは実にさまざまです。「ことば」を深く知るために、広げるべき視野は無限大といってもいいでしょう。興味がひとつにしぼれないという人、その関心のひとつと「ことば」の関わりを探求することから大学での学びを始めてみませんか。
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