なぜ、薬(もの)が体(いのち)に作用するのか?
〜分子の観点で読み解く生物学の最先端と、創薬〜

講座番号: 公開講座

< 講座概要 >
 私たち生き物の体は、細胞でできています。細胞の中には、核やミトコンドリアなどの細胞内小器官があり、それらの機能を担っているのは、DNAやタンパク質です。では、DNAやタンパク質って、何でしょうか。高校の生物や化学の教科書で、これらが構造式で描かれているのを見たことがあると思います。構造式で書くことができるということは、そう、DNAもタンパク質も「分子」なのです。  1953年のDNA二重らせん構造の提唱は、その機能(DNA複製の仕組み)の理解について、非常に大きなインパクトを与えました。その後、遺伝子組み換え技術によるタンパク質調製技術や、コンピューター、計測機器の進歩によって、DNAやタンパク質の構造解析は飛躍的な発展を遂げました。2000年代になり、生命現象の根幹の一部ともいえるRNA合成酵素やリボソーム等の分子構造が明らかにされ、化学(分子の観点)に基づいた機能の理解が可能になりました。これらの研究はノーベル賞を受賞しました。科学史上大きなインパクトをもたらした、近年の基礎研究の成果を紹介します。  また、タンパク質の分子構造が決定できるようになると、疾患に関するタンパク質の分子構造に基づいて、新規な薬がデザインできるようになりました。タミフルに代表されるノイラミニダーゼ阻害剤の開発は有名です。また、最近の新型コロナウイルス感染症の治療薬の開発にも貢献しました。こうした手法はドラッグデザインと呼ばれ、大変期待されています。ドラッグデザインは巨大製薬会社でなくても可能なため、創薬ベンチャー企業の出現にもつながりました。分子の知見の最近の医療への展開について紹介します。
< 受講生へのメッセージ >
 日頃手にする薬、例えばアスピリンは、高校化学の教科書に必ず出てくる単純な分子です。そんな、ただの分子にすぎないアスピリンがなぜ優れた解熱鎮痛作用を示すのでしょうか。現在では、アスピリンが体のなかで結合するタンパク質の分子構造とともに、明確な理解が可能となっています。また、古代から昭和まで、薬は、植物や微生物が作り出す多様な分子群を探索することによって発見されてきました。ところが、この数十年で、細胞や、ウイルスがもつタンパク質分子の立体構造が、急速かつ膨大に明らかになったことで、それらに結合して、著効を示す薬(分子)がデザインできるようになりました。創薬のパラダイムシフトについて、解説します。
分野自然
期間2024/09/14(土)
曜日・時間土曜日 10:20〜11:50
回数1回
講座提供機関東京薬科大学
会場学園都市センター
残席状況
お知らせ
備考場所:イベントホール 定員160名(予定)
その他資料      
講座詳細詳細
【講座スケジュール】
日程時間講義内容
2024/09/14(土) 10:20〜11:50

【講師紹介】
三島 正規
薬学部 薬学科 教授 2021年 - 現在 東京薬科大学 薬学部 教授 2006年 - 2021年 東京都立大学(首都大学東京)理学研究科(理工学研究科)准教授 2007年 日本学術振興会海外特別研究員 派遣先 欧州分子生物学研究所(EMBL Heidelberg, Germany) 2001年 - 2006年 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 助手 1996年 - 2001年 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 分子生物学専攻 修了 1996年 名古屋市立大学 薬学部 製薬学科 卒業 著書:(1)新スタンダート薬学シリーズ 3巻 T.物理化学 2024 分担執筆、(2)かたちの化学(放送大学教材) 2023 分担執筆、(3)現代を生きるための化学・改訂版(放送大学教材)2022 分担執筆、(4)化学結合論: 分子の構造と機能 (放送大学教材)2017 分担執筆、(5)基礎から学ぶ有機化学 (朝倉書店)2013 分担執筆
料金区分受講料
一般 0円