< 講座概要 >
英語や日本語をまじめにコツコツと勉強していると、習ったことのない違和感満載の表現に出会うことがあります。「全然おいしい」はだいぶ市民権を得ていますが、「韓国っぽ」はいかがでしょうか?
英語でもそのような例はたくさんあります。アメリカのオバマ元大統領は頻繁に“The point is is that SV”という表現を使用していました。習った文法によるとbe動詞は一つで良いはずですが…ブッシュ元大統領にいたっては、“And so my point was,is that SV”という不思議な言い方も披露されていました。ほかにも“They might could go...”のように、助動詞を重ねる事例も頻繁に観察されています(※現代英語では非文法的とされていますが、中英語期には見られた現象です)
大事なことは、「それは間違っている」と規範的な正義感を発揮するのではなく、「母語話者が合理的に情報を処理できているということは自然な姿なのだろう」と受け入れつつ、「ところで何で?」と理由を探ろうとする探究心だと思います。ことばは変化することで新陳代謝をし、鮮度を保ち続けられているとも言えますから。
本講座では、このような一見すると「?」と思うような「逸脱表現」に光を当て、その機序をみなさんと一緒に探り当てていきたいと思います。
【授業計画】
1.ことばを保つ仕組みと壊す仕組み―(宇野2021)の紹介と検討―
2.規範と逸脱―言語表現の正しさとは何か―
3.ことばのバリエーションの創発―多様さをどう捉えたらよいか―
※毎回資料を配布します。
< 受講生へのメッセージ >
どの表現にもほかの表現では担い切れない個性があるものです。「全然おいしい」は「とてもおいしい」と意味が同じだと思われがちですが、いや、いつでも入れ替え可能ではないはずです。言語感覚を研ぎ澄まし、ことばの不思議を探求する好奇心を高めてお越しください。
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