< 講座概要 >
【授業の目的及び到達目標】
本講義は、安全保障論の基礎的知識を習得することにある。
安全保障論では、軍事問題に限らず、社会の安全認識に影響が及ぶ事象を対象とする。本講義では、安全保障論の包括性に留意しつつ、戦略論や軍事学などを中心に安全保障論の理論構造を学ぶ。ただし、安全保障で扱うべき事象の多様性を考慮し、理論の将来の発展可能性を、今日の現象の中に探る。
なお、この科目は、以上を学ぶことにより、「卒業認定・学位授与の方針」の中で謳う「専門的知識」を身につけるための科目である。
【授業計画】
第1回 今日の戦略環境と安全保障研究
現在の安全保障論の構図、そして理論が政策にどのように関連するか説明する。
第2回 安全保障論の視座
安全保障論で扱う主題、その扱い方、さらにはそれをどのように政策に適用すべきか説明する。
第3回 現実主義
国際関係論の現実主義を踏まえつつ、安全保障論における現実主義的思考の概要を解説する。
第4回 リベラリズム・平和研究
安全保障論におけるリベラリズムの系譜を説明し、同時に平和研究の概要を解説する。
第5回 批判理論・社会構成主義・人間の安全保障
安全保障論に対する批判理論の貢献を解説する。人間の安全保障に対する関心が、いかに伝統的な安全保障論と関連するか説明する。
第6回 軍事安全保障
安全保障における軍の役割と機能を解説する。軍事史についても、今日の安全保障問題と関係する範囲で解説する。
第7回 戦略論@
軍事力の役割を含む、戦略論の基本的考えを解説する。特に核戦略について解説する。
第8回 戦略論A
軍事力の役割を含む、戦略論の基本的考えを解説する。通常兵器を中心とした戦略論を解説する。
第9回 軍備管理軍縮論
安全保障政策において、軍備管理軍縮がどのような位置づけを受けており、どれだけの機能を果たしているのか概観する。
第10回 地政学
地政学の議論を紹介し、今日地政学が興隆している理由を、アジア太平洋の安全保障環境から説明する。
第11回 戦争と安全保障@:戦争研究の理論的考察
大戦略の在り方、戦争と戦略、核抑止と制限戦争、テロリズムと戦争、ハイブリッド戦争などを扱う。シーパワー、エアパワー、ランドパワーについて考察し、同時に新たな領域についての戦争について解説する。
第12回 戦争と安全保障A:戦争と社会
戦争社会学を扱う。政軍関係や、軍隊と社会の関係の在り方、国際法等への影響など、社会がどのように戦争を考察してきたか解説する。
第13回 エネルギー安全保障
エネルギー安全保障を考察し、原子力政策の歴史的展開と、エネルギー供給の問題と各国の安全保障政策がいかに連動しているか解説する。
【教科書・参考書】
教科書
Paul Williams, Matt DcDonald, Security Studies: An introduction, 3rd.(Routledge,2018).
Alan Colins, Contemporary Security Studies,5th.,(Oxford,2019).
教科書・参考書
Thomas G. Mahnken, Competitive Strategies for the 21st Century(Stanford,2012).
Elinor Sloan, Modern Military Strategy: An Introduction(Routledge,2016).
Lindley-French and Yves Boyer, The Oxford Handbook of War(Oxford,2012).
Peter Hough, et.al., International Security Studies: Theory and Practice, 2nd.(Routledge,2021).
その他授業で指定する。
※10月14日は祝日開講です。
< 受講生へのメッセージ >
大学生活において必ず身に付けなければならないのは、考える習慣です。現代社会で発生する出来事は、しばしば通常の想定を超えるものがあります。そのため、目前の現象や経験に左右されるのではなく、基礎的な見識と教養を身に付け、社会が必要とした時に適切な対応が取れるようになる必要があります。そのため、大学では、腰を据え、古典を読み、学生同士で議論を重ね、教養を磨いていって欲しいと思います。大学院生は、現場における見聞を深め、外における議論に積極的に参加し、自らの発信力を高める努力をして欲しいと思います。
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