< 講座概要 >
源氏物語には800首近い和歌が含まれています。和歌は、その機能によって贈答歌、独詠歌、唱和歌の3つに分類されますが、源氏物語の作者は、この和歌の機能を見事に活かしてすばらしい作品を書き上げています。この講座では、それらの和歌に焦点を当てながら、源氏物語を読み進めていきますが、物語の和歌は、その和歌がどのような場面で、どのような心理状態で詠まれているのかを知らなければ、和歌そのものの意味も正しく読みとることができません。従って、和歌だけでなく、その前後の文章や物語の流れも読んでいくことになります。
今期は、夕霧巻を読む予定です。
亡き親友柏木の遺言に従い、夕霧は未亡人となった落葉の宮が母御息所と共に住む一条邸を度々訪れているうちに、落葉の宮に恋心を抱くようになりました。しかし、まめ人と定評のある夕霧は、自重しようと努めますが、かえって恋情を募らせる結果を招いてしまいます。
以前から病いがちだった御息所の加持のため、落葉の宮たちが小野の山荘に移りました。夕霧は、その際も何かと援助したのですが、八月の中頃、秋の風情の美しい小野を訪ねました。御息所に代わって、自ら応対する宮に夕霧は初めて、直接に恋情を訴えました。暮れ方から霧が立ち込め、それを口実に、夕霧は宮のそばで一夜を明かしました。しかし、宮は心を許さず、和歌の贈答はありながらも、この逢瀬は、むなしく終りました。
祈祷師から、夕霧の宿泊を告げられた御息所は、信頼していた夕霧に裏切られた思いや、宮の憂慮すべき立場などに苦慮し、夕霧にその真情を確かめるため、病いを押して手紙を書きました。ところが、その手紙は、タ霧の妻の雲井雁に取り上げられ、夕霧は読むことも、返事を書くことも出来ませんでした。一方、返事の来ないことに絶望した御息所は、病状を悪化させ、急逝してしまいました。
夕霧の世話のもと、葬儀が行われ、落葉の宮は出家を願いますが、父朱雀院に止められ、夕霧が修理した一条邸に連れ戻されました。
源氏は、夕霧と落葉の宮との噂を聞き、心を痛めますが、口出しはしませんでした。紫の上も、女の宿世を改めて考えざるを得ませんでした。夕霧はついに落葉の宮との婚儀を行い、雲井雁は耐え切れず、里に帰ってしまいました。
二人の妻をもつこととなった夕霧のその後の人生は、どのようなものになるのでしょうか。
※本講座は「源氏物語の和歌(38)Bコース」と同じ内容です。Bコースに同時にお申込みはできません。
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